『人形の家』と宮部みゆき

ディズニーの『トイ・ストーリー2』が好きな人は多いと思う。ガレージセールから連れ去られて、日本のおもちゃ博物館に連れて行かれようとしているウディを、バズや他のみんなが助けに来る、というストーリーだ。喜んでおもちゃ博物館へ行き、みんなに見てもらおうと考えているウディに、バズが「ガラスの外から眺められるだけでいいのか?もう二度と子供に遊んでもらえなくていいのか」説得するシーンがある。とってもよく出来た映画で私も大好きなのだが、この『人形の家』は、同じテーマを扱っていて、しかも悲劇的な結末ゆえに、より深みがある。人形遊びの好きな女の子にはぜひ読んでもらいたい話。

<あらすじ>
トチーは百年ほど前につくられた、小さな一文人形。エミリーとシャーロットという姉妹の下、プランタガネットさん、ことりさん、りんごちゃん、犬のかがりという名の人形たちと、擬似家族を作って、共に暮らしている。ある日、子供たちのひいおばあさんが使っていた人形の家が送られてくる。古い家を姉妹は一生懸命掃除し、綺麗にする。その折、トチーを展覧会へ出すように姉妹のおばさんに請われる。展覧会でヴィクトリア女王の目に留まり所望されるトチーを憎しむのは、マーチペーンという美しいが意地悪な人形。もともとマーチーペーンとトチーは両方とも、ひいおばあさんの家の人形だったのだ。展覧会後、トチーが姉妹のもとに戻ってくるのとほぼ時を同じくして、高慢なマーチペーンが姉妹のところに来て、人形の家は・・・


人形遊びをした事のある子供なら、はっとするような事が随所に書かれている。

「人形は、何か[する]ことができません。させてもらうほかありません。人形にとっては、子供たちがまともかどうかということが、とりわけ大事なことなのです。」

[人形は何も話すことが出来ません。でもしばしば人形の願いは口に出していうのと同じくらい強いのです。みなさんは人形の願いを感じたことがありませんか?」


これを読んだ子供は、、人形の遊び方がまたひとつ変わってくると思う。(ちなみにうちの娘はまた色んな変わった服を自分で縫い出して、ちょっと大変。。)小さいときに、あたかも人形自体が生きているかのように遊ぶことは、とても意味あることだと思う。

このマーチペーンという人形が、典型的な意地悪女(爆)。高価な材料で出来ていて、古く、美しく、価値があり、それでいて高慢、意地悪、我儘、冷酷、まあこのあたりの形容詞を入れたらたいてい当てはまる(笑)。対照的にことりさんのことを表現するのは難しいが、ことりさんの役割を考えたとき、彼女のような人こそが本当の強さを秘めた人といえるのだろう。


私がこれを読んでいたのと同時期にたまたま再読していた宮部みゆきの『ステップ・ファザー・ステップ』の解説に、この本についての記述があり驚いた。宮部みゆきは小学3年生のときに読んだ『人形の家』の、不思議な物語、とりわけ、悲劇的な最後に、心は強く引き寄せられた。その後も最も好きな小説として、大切に読み返された・・・とある。

そう言われてみれば、宮部みゆきの世界と共通する部分が多くあるように思える。彼女の小説には、犬が語り手だったり、財布が語り手だったり、人間以外のものに語らせる試みがみられるが、人形を擬人化しているこの小説とどこか繋がっているのかもしれない。また、悲劇もあるが、正義も生かされる、という点も、今の彼女の小説に共通する部分が感じられる。小学校の頃に繰り返し読んだこの小説が、作家宮部みゆきのベースとなって、今もあるような気がする。


『人形の家』 ルーマ・ゴッデン(作) 瀬田貞二(訳) 岩波少年文庫

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この記事へのコメント

そらまめ
2006年06月07日 02:18
うーん、奥が深いですね。私の姪っ子はまだ二ヵ月ですが、こういう本は沢山読んでいろいろなことを考えて欲しいです。
オシオシ
2006年06月07日 13:02
二ヶ月の姪っ子さん、可愛いでしょうね。これからもっともっと可愛くなる、いい時ですねー。
娘小3で最近この本を読みました。まだまだ道は長い・・・かな?ちょっと早目から絵本を読んであげると、女の子なら興味を持つかもしれないですね。

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